介護財政の見通し:財務省分科会の建議からの示唆

更新日:2023年6月22日 / 木村

こんにちは、皆さん。

木村です。

 

今回は、来年度に控える次期介護報酬改定についてお話ししたいと思います。この改定は、診療報酬改定と同時に行われる予定です。その方向性を占う重要な材料として、財務省の分科会がまとめた建議に注目して、介護財政について考えてみましょう。

まずは、p.69以降に記載された介護に関する要点をまとめます。

・介護人材の需要は増加する見込みです。必要な介護サービスを提供するためには、ICT機器を活用した業務負担の軽減やデータに基づくサービスの品質向上が不可欠です。さらに、介護施設や通所介護においては、「3対1」などの人員配置の効率化が必要不可欠です。

・介護事業は安定した収益を上げています。社会福祉法人では、平均して費用の約6ヶ月分の現預金や積立金を保有しており、その額も増加傾向にあります。介護事業者全体においても、財務情報の公開や経営状況の分析が重要視されています。医療法人や営利法人も含めて、保有資産を含む財務情報を見える化することが求められています。

・在宅介護や施設介護において、事業規模が大きくなるほど収支差率が上昇しています。経営の協働化や大規模化の推進は、従業員の処遇改善にも貢献することが期待されています。

・多床室の室料負担については、在宅介護と施設介護の公平性を確保するため、どの施設でも公平な居住費を求める観点から、室料相当額は利用者本人の負担とする見直しが必要です。

・さらに、ケアマネジメントにおいて利用者負担を導入すべきです。

 

また、障害福祉については、p.73に詳しく記載されています。

 

・直近の10年間で障害福祉の利用者数や事業所数が約2倍に増加しています。

・利用者数には地域差が大きく見られ、特に総量規制のないグループホームの間で地域差が顕著です。サービスの供給が計画的かつ効率的に行われるよう、総量規制の対象を拡大するなどの検討が必要です。

・障害福祉サービスでは、利用者負担が比較的低いため、報酬体系やサービス提供において利用者側からの制約が働きにくい状況があります。例えば、放課後デイサービスなどは営業時間で報酬が設定され、利用者ごとの利用時間が考慮されていないため、報酬体系の見直しが必要とされています。

これらの財務省分科会の建議は、次期介護報酬改定の方針決定に大きな影響を与える可能性があります。介護財政の見通しを把握し、適切な方向性を示すためには、これらの要点に注目することが重要です。

今後、改定の具体的な内容や方針が発表されることを期待しています。介護に関わる皆さんにとって、より良いサービス提供や財政の健全化が実現されることを願っています。引き続き、介護分野の動向に注目し、情報を共有していきましょう。

 

詳細はこちらです。

 

財務省 財政制度等審議会(令和5年5月29日)「歴史的転機における財政